2026/08/31 07:00 | メルマガ | コメント(0)
第382号 氷見野副総裁、9月利上げ示唆せぬ曖昧な講演の真意

〇氷見野副総裁、9月利上げ示唆せぬ曖昧な講演の真意
27日(木)、日銀の氷見野副総裁が埼玉県金融経済懇談会で講演を行った。
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あとがき
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先週、都心の中古マンション価格が、3カ月連続で下落したという報道を目にした。東京カンテイによれば7月の都心6区平均は前月比1.7%安の1億8195万円、下落が3カ月続くのは実に14年ぶりの長さだという。目黒や江東といった周辺エリアにも下落は波及し、在庫は過去最高水準に積み上がったままのようだ。バブル超えの上昇が続いてきた都心の中古マンション価格は、ついに調整局面に入ったのだろうか。
一方で、新築マンションについてはまるで別世界のような報道がある。不動産経済研究所の集計では、23区の7月平均価格は前年同月比96.0%高の2億6520万円と、単月として過去最高を更新したとのこと。中古が下がり、新築が上がる。この矛盾は何を意味するのか。その答えは価格帯別の成約率を見るとある程度納得がいく。
新築マンションでは、3億円超の物件は301戸中284戸が成約し、消化率はほぼ9割。おそらくそのほとんどは麻布十番のタワーマンションだろうという話がある。ところが、サラリーマンなどの実需が強いであろう1億〜2億円帯は400戸中230戸しか売れず、8000万〜1億円帯も160戸中80戸と半分にとどまっている。平均値を押し上げているのは富裕層向けの高額物件であり、実需の中心層はむしろ及び腰になっている。統計上の「過去最高値」と、街で聞く「今は買い時じゃない」という肌感覚のズレは、この需給の分裂から生じている可能性がある。
そして、こうした値上がりの裏側には、投機的な短期売買の存在がある。国交省の調査では、都心6区で購入後1年以内に転売されたマンションの比率は、23年の7.1%から24年上半期には12.2%まで上昇したとのこと。国交省は2027年度税制改正要望に投機抑制策を盛り込む方針で、短期譲渡益への課税強化が焦点になりそうだと先週、日経新聞が報じている。
マンションの投機取引抑制へ、国交省が税制改正要望 高騰に歯止め(日本経済新聞、2026年8月25日)
さらに、金融機関の融資姿勢に関する報道も出ている。
金融庁が「50年住宅ローン」に懸念、個人向け融資の監視強化-関係者(ブルームバーグ、2026年8月28日)
金融庁が最長50年住宅ローンへの目を光らせ始めた背景にも、個別リスクを超えた状況がある。欧米の住宅ローンは一般に30年前後で組まれることが多く、日本の新規融資はすでに半数が35年超、そこに40〜50年物が続々と出てくる状況となっている。この欧米と日本の違いは、金利がある世界か、金利がない世界かであり、日本のローン長期化は、しばらく金利のある世界を知らない国だったからこその現象だ。
ただし、日銀の金融システムレポート(26年4月号) を読む限り、当面のリスクは限定的とされる。変動金利上昇による月々の返済増は、借入額増加でDSR(債務返済比率)が上がっていても、賃金上昇でおおむね吸収されるという見立てだ。だが40〜50年という借入期間そのものが、将来の金利変動や所得の不確実性に対する脆弱性を静かに積み上げていることに変わりはない。
ゼロ金利が当たり前だった世代が「使える与信は使い切る」といった借入行動のまま、長期ローンで返済負担を先送りし資産運用を積極化させ、金利のある世界に足を踏み入れたのだとすれば、当局が神経質になるのも無理はない。次の金融システムレポート10月号でこの評価がどちらに振れるか、注目したい。
短期の投機筋への課税強化自体は妥当だろうと考える。実需で買った人にとって今の不動産評価額が上がっているか下がっているかは本来関係のない話だろう。そもそも、投機的な売買がまかり通ること自体が不健全で、自分が投機筋でないならどうせすぐ売るつもりもないのだから、この税制論議は基本的に聞き流してよいはずだろう。とはいえ、都心の不動産には元々相応の価値があるのは当然だろうし、値上がりが続く中で「今のうちに買わなければ」と焦って購入した実需層が、その後の自宅の評価額を気にしてしまうのもまた事実だろう。
冒頭のようにすでに中古物件の価格調整が始まっている可能性があるところに、インフレで管理費・修繕費は上がり、日銀の政策金利の上昇が見えており、その上で、短期譲渡益への課税まで強化、融資の監視強化となれば、これから不動産価格が上がる余地は本当に残っているのか、という不安が頭をもたげるのも当然だろう。都心不動産は、本当にまだ「買い」なのだろうか?
とはいえまだ、金融環境は緩和的で、都心のマンション物件の買い手となっている外国人へ規制は掛かっておらず、円安は継続、となれば買い手はいるはずだが、果たして・・・。
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