2025/11/22 19:00 | 戦略論 | コメント(0)
原発の実態
今週の戦略関連のニュースで注目すべきは、やはり先週に引き続いて、高市首相の国会答弁に端を発する日中関係の悪化のエスカレーションでしょう。
本稿執筆時点でも中国側の怒りが収まる様子はありませんが、日本として忘れてはいけないのが、今回の騒ぎは中国側が主張しているように高市総理の国会答弁そのものから始まったわけではなくて、中国の大阪総領事である薛剣(せつけん)氏のSNSのトンデモ発言から始まったという点です。
■ 中国総領事「汚い首を躊躇なく切り落とす」発言は出世競争の一環…中国の脅迫に日本が繰り出すべき最強対策4(11/14 PRESIDENT Online)
薛剣氏は「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もなく斬ってやるしかない」と11月8日にSNS(X)に朝日新聞の記事へのリンクを引用する形で書き込んだわけですが、一国の首相に対して外国の総領事が「首切り」(decapitation)という、まるで暗殺まで示唆するような内容だったのですから、その国から反発が出るのは当然です。
この発言を受けて、日本は政府が中国側に抗議するとともに、与党である自民党が薛剣氏に対して「ペルソナ・ノン・グラータ」(≒国外退去措置)を適用すべきだという非難決議案を採択しました。
■ ペルソナ・ノン・グラータを含めた対応を行使するべき 中国の総領事の不適切投稿を受けて決議を採択(11/11 自民党)
これはまずいと思ったのか、薛剣氏はその後に当該ポストを削除しましたが、そこから今度は北京側の反応がエスカレートし、結果として「高市首相は発言を撤回しろ」というナラティブに。論点がすり替わり、問題が何だったのかわからなくなっています。
個人的には、たしかに高市首相はやや踏み込んだ発言をしてしまった点はあると感じています。しかしそれでも問題の原点はあくまでも薛剣氏のSNS上での問題発言です。この論点から決して目を離してはならないと考えます。
■ 【解説】 高市首相の台湾をめぐる発言、なぜ中国を怒らせたのか(11/12 BBC)
これから日本のとるべき戦略としては、北京側からなんと言われようと、粛々と国防関連の事業を進めるだけであり、まだこの段階で事態の収拾に動くことはしない方がよさそうです。
なぜなら、中国側の盛り上がり方は、習近平に忖度する形で末端の組織が暴走しているという形に近く、そもそも北京の指導層は当分は事態を収める気がなさそうだからです。
ここでポイントとして押さえておくべきは、APECの会談のあとで米中関係が安定し始めた矢先、しかもトランプ政権がエプスタイン問題などで内向きになりつつあるところで、中国は経済が停滞しているという、これらが重なったタイミングで今回の騒動が起こったことです。やはり日本がちょうどよい「スケープゴート」(身代わりの犠牲)になったということかもしれません。
また今回の騒動において個人的に驚いたのは、普段はリベラルというか、親パレスチナ、反帝国主義的な主張をしている識者たちが、まさに帝国主義的な主張をしている中国に対し、ことごとく「もう中国にはかなわないから謝れ」のようなことを悪びれもなく述べていることでした。普段の反骨精神はどこにいったのでしょうか?
さて、今回の本題は原発です。
つい先日、私は何人かの識者たちと一緒に、北海道に唯一存在する原発のある北海道電力の泊発電所に見学に行って参りました。その経験をもとに考えたことをお伝えします。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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原発の実態
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▼原発に行ってきた
▼心に響いたこと
▼人材と教育
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近況報告
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某コンサル会社の主宰するお客さん向けのセミナーに「ゲスト講師」として参加してきました。
いわゆる「地政学リスク」について公開の場でお話させていただくことは多いのですが、今回は普段とはまったく違う業界(保険)の人々の前でお話し、しかもその会社のコンサルの方と一緒に発表資料を準備をするという貴重な経験をさせていただきました。
トピックは現在ホットな「台湾有事」だったのですが、ビジネス界の人々の危機意識はまだまだ決定的に足りない、とあらためて感じました。
いみじくも、アメリカの戦略家で拙訳『デンジャー・ゾーン』の著者としても有名なハル・ブランズが、「多国籍企業は米中戦争に備えられていない」というコラムを書いておりました。
■ Multinationals Aren’t Ready for the US-China Clash(11/13 AEI)
彼の指摘する通り、リスクは単なる脅威ではなく、「チャンス」もあります。危機に柔軟に対応しつつ、それを乗り越えてさらなる発展につなげられるような準備をしたいものです。
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好評発売中の書籍
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■『世界最強の地政学』文春新書(Amazonで期間限定で読み放題!)
■『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(再び増刷決定!)
■『やさしくわかるエネルギー地政学』小野﨑 正樹、技術評論社
■『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房(増刷決定!)
■『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
■『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(第三刷決定!)
■『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)
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