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2025/11/11 09:00  | バックナンバー |  コメント(0)

トランプ政権の新しい大戦略


先週の戦略関連のニュースで注目すべきは、トランプ大統領が10月30日、米中会談の直前に自身のSNSで「核実験を再開する」との発言をしたことです。世界中の安保関係者がざわめきました。

プーチン氏「核実験」準備の検討を指示 トランプ氏発言に対抗(11/6 日本経済新聞)

ルトワックの戦略論の核心である「パラドキシカル・ロジック」の話を引き合いに出すまでもなく、アクションがあればリアクションはつきものです。上記のニュースからもわかるように、さっそくロシアのプーチン大統領が5日に核実験の準備を開始すべきか検討するよう国防相らに指示したとのことです。

「核時代」(nuclear age)といえば、核武装した米ソという超大国同士が睨み合いを始めた冷戦時代を指し、冷戦後は「第二次核時代」(second nuclear age)に突入したと言われますが、冷戦期ほどの脅威は感じられないままかなりの時間が経ちました。しかし、ロシアや中国がアメリカと本格的に対立するようになり、上記のような一連の報道が出てくるのを見ると、あらためてこの「第二次」の時代に入ったことを実感します。

おりしも絶妙のタイミングで、ネットフリックスと映画館で『ハウス・オブ・ダイナマイト』という映画が配信・公開されました。

レベッカ・ファーガソンが米軍の大佐、ゲイブリエル・パッソが国家安全保障担当副アドバイザー、そしてイドリス・エルバが大統領役。この三人をはじめとする米国トップの人々が、北朝鮮と思われる場所から突然に米国に向けて弾道ミサイルの発射が検知されたことを受け、たった30分以内に米本土に到達するという短い時間の中で、パニックになりながら決断を迫られる姿を強烈に描きます。

監督は『ゼロ・ダーク・サーティ』や『ハート・ロッカー』など、戦争に関する映画で緊張感のある映像を引き出すことにおいては右に出る者はいないといわれるキャスリン・ビグロー。アカデミー賞の監督賞を女性として初めて獲得した人物であり、元夫は『タイタニック』や『アバター』で有名なジェームズ・キャメロンですね。

この映画、北朝鮮の核ミサイルのターゲットになっている日本にとっても他人事ではありません。そうした脅威をあらためて認識させてくれる、実に優れた作品です。興味のある方はぜひ。

さて、今回の本題は、このような厳しさを増す国際情勢の中で、その嵐の中心となっているトランプ政権の対外政策についてです。その新たな指針とでも言えそうなものを、オーレン・キャスという人物がフォーリン・アフェアーズ誌に寄稿しています。こちらを紹介したいと思います。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

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トランプ政権の新しい大戦略
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▼トランプ政権の新たな大戦略?
▼大戦略の歴史
▼三つの要求
▼相互主義の未来
▼日本への示唆

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近況報告
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突然ですが、ジャパン・モビリティーショー(旧モーターショー)2025に行ってまいりました。

某企業の関係者から特別招待チケットを思いがけずいただいたので、どうせだったら行くしかないと覚悟を決めて行ったわけですが、これが想像以上に個人的に大ヒット。

この手の見本市というものに出向くのは本当に久しぶりだったのですが、行ってみると未来を感じさせてくれるワクワク・ドキドキ(古い)な展示が多く、実に多くの刺激を受けました。

主に見学させていただいたのはバイクのメーカーが集中する東棟のエリアだったのですが、一般開放日だったせいか思った以上に若い見学者が多く、中には小学生や中学生などの団体も。

韓国・中国勢のメーカーの躍進だけでなく、日本のメーカーも元気なところを見せていたわけですが、いずれにしてもどのメーカーも「見せる工夫」という部分に趣向を凝らしている点が目を引きました。

個人的には、日本のメーカーがオッサン世代にも響くようなノスタルジックな展示(たとえばホンダだったら昔の全盛期のF1に関するもの)などをアピールしている点も刺さりました。

ヤマハの展示では、あの「初音ミク」がメインステージでリアルな吹奏楽バンドと一緒にパフォーマンスをしていたわけですが、考えてみたらこのボカロによるバーチャル・シンガーが出てきたのが2007年なので、すでに流行りはじめてから15年以上たっているわけですね。

それがヤマハのブースのトップを飾るということは、その当時にリアルタイムで影響を受けていた人々(高校生や大学生)がヤマハに入って宣伝や営業の担当になって初音ミクを採用している・・・と考えると、時代の流れの速さを感じました。

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好評発売中の書籍
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『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
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『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
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