ODYSSEY Geopolitics & Business

2025/10/12 18:00  | 戦略論 |  コメント(0)

スター・ウォーズから戦略を考える


先週の戦略関連のニュースで注目すべきは、なんといってもトランプ政権の仲介によるイスラエルとハマスの停戦合意と人質解放のニュースでしょうか。

イスラエルとハマス、停戦が発効-ガザ和平交渉「第1段階」で合意(10/9 ブルームバーグ)

もし、これが本当に履行されれば、2年にわたる残忍な戦争がようやく終わりと告げることになり、トランプ大統領念願のノーベル平和賞も一歩近づく・・・わけはなさそうですが、とにかくこれで「世界三大戦略地域」の一つである中東に、束の間の和平が訪れそうな雰囲気です。

ところがさっそくイスラエルがトルコを攻撃するのでは、という不穏な話が出てきていて、どうも同国の過激な対外姿勢は相変わらず続きそうな観測が出てきています。

欧米・中東の情報筋で語られる「次はトルコ」 イスラエルとNATO加盟国の対立で米国はどちらにつくか(10/8 Yahoo!ニュース)

その脇で気になるニュースとして、実は今アメリカでは、ミサイルや砲弾などの炸薬の原料となるTNT火薬が製造できず、輸入先の国が売ってくれなくなったので、欠乏していて困っているという記事がありました。

Ukraine War Leads to Global Shortage of TNT(9/1 The New York Times)

なんとアメリカは、80年代に環境汚染になるからという理由で、TNT工場を国外に頼るようになり、主にロシアや中国、そしてポーランドやウクライナに外注していたとのこと。当然ながら露中は近年の関係悪化で売ってくれなくなり、ポーランドはウクライナへ供給しているのでアメリカに回す分がほとんどなくなってしまい、アメリカはピンチに追い込まれているというのです。

拙訳『アジア・ファースト』で、現在国防総省のナンバー3を務めているエルブリッジ・コルビーも指摘しておりましたが、現在のアメリカは造船業の力が圧倒的に落ちてきており、その生産量は中国の200分の1と言われるほど劣った状態です。

端的にいえば、アメリカは製造業を手放してしまい、いまや得意の武器や兵器などでさえまともにつくれなくなりつつある、そのような傾向になっているということです。

こうした中で、ウォールストリート・ジャーナル紙では「ヘグセスは戦士のエートスよりも兵器の供給をしっかりしてくれ」と指摘した読者からの投稿が掲載されて話題になっています。

Our Troops Need More Than a ‘Warrior Ethos’(10/8 WSJ)

いずれにせよ、これから中国と戦略的に対峙していこうとするアメリカがこのような状態にあるという点について、同盟国である日本の我々も多少とも危機感を持っておくべきなのかもしれません。

さて、今週はいつもと話題を少し変えて、サイエンス・フィクションの話をしたいと思います。と言っても、単なるSFではなく、世界的に広まったコンテンツとして有名な映画シリーズのこと。その映画から、戦略を学んでしまおうという話です。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

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スター・ウォーズから戦略を考える
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▼SFで学ぶ?
▼戦略研究とは?
▼ジェダイの教訓
▼兵器の思想

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近況報告
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今週は長崎県にある自衛隊の某基地にお邪魔して講演をしてきました。

この手の基地訪問での講演というのは、おかげさまでずいぶん前からやらせていただいているのですが、現地に行くたびに様々な発見があります。

我々一般人からすると、自衛隊というのはみんな同じようなイメージに映るかもしれませんが、実際に付き合ってみると、実に多種多様な任務がありまして、毎回その仕事に従事している人々の経験の違いに驚かされます。

なにせ同じ自衛隊の同じ軍種(陸・海・空)の、しかも同期の人同士でも、久々に会ってみると「え、おまえそんなことやってるの?」と驚くくらい。

とにかく日本を守るというリアルな仕事は多様性にあふれていて、しかも本当に大変なものです。

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好評発売中の書籍
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『世界最強の地政学』文春新書
『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(再び増刷決定!)
『やさしくわかるエネルギー地政学』小野﨑 正樹、技術評論社
『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(第三刷決定!)
『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)

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