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2025/12/29 06:30  | メルマガ |  コメント(0)

第337号 ゆく年くる年


今年も残すところあと僅かです。今週からお休みに入っている方も、まだまだ働くよ、という方もどうぞお付き合いください。為替介入を臭わせた片山大臣発言も取り上げていますので、為替動向についてご興味のある方も是非。

●先週のマーケット
●プロローグ
・閑散相場
●今週の米国経済統計(予想)
●先週の米国経済統計(結果)
●経済統計分析
1. 12月CB消費者信頼感
2. 新規失業保険申請件数
3. 片山発言「断固たる措置」
●あとがき

それでは、さっそくまいりましょう。

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あとがき
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2025年の金融市場は、米国市場では12月24日に、S&P500、NYダウはいずれも史上最高値を更新。日本では日経平均株価が10月31日に、TOPXは12月26日にそれぞれ史上最高値を更新している。日本はあと2営業日、米国は3営業日残っており、特に米国は閑散に売りなしで株価の更なる押し上げがあるか注目される。

ただ、市場参加者の目線はすでに2026年に向いており、ウォール街のストラテジストの2026年予想は適度に強気なものが多い。背景には世界の金融市場に大きな影響を与える米国の金融・財政政策があり、両政策を追い風にした堅調な経済と好調な企業業績が期待されていることがある。ただし、そういった予想の多くは裏切られることが多く、それは常に想定外のことが金融市場では起こるためで、2026年の株価を正確に予想するのは至難の業である。

想定外のことが起こるという意味では、今年もいろいろなことがあった。

米国ではトランプ第2次政権が発足し、就任直後に各国へ所謂トランプ関税を課すことを発表。4月からスタートした関税政策は日本を含めた様々な国が対応を迫られた。その後、各国との個別交渉により関税率が一部軽減されたものの、企業業績や米国を含むサプライチェーンに影響を与え、米国においてはインフレの再燃が懸念された。現在は落ち着いたように見えるこの問題も、関税を巡る最高裁の判断によってはどう転ぶかはまだわからない。

また、FRBが9月から12月にかけて3会合連続で0.25%ずつ合計0.75%の利下げを実施。2025年を通して1.0%の利下げを実施した。2024年の利下げを起点とすれば、この利下げ局面においてFRBは1.75%の利下げを行ったことになる。政策金利であるFFレートの誘導目標レンジは年末に3.50〜3.75%まで低下しており、特に直近3回の利下げの経済への効果が半年程度遅れて出てくると思われ、2026年の米国経済に顕在化してくると思われる。ただし、すでにFFレートは中立金利に接近してきており、2026年以降の利下げ継続には不透明感がある。

その金融政策の行方で注目を集めるのは、やはりFRB議長が誰になるか?という点。候補は、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長とウォーシュ元FRB理事、クリストファー・ウォラー現FRB理事、可能性は低いが米資産運用大手ブラックロック幹部のリック・リーダーなどの名前があがっている。

一時は、ハセットで決まりかと思われたが、誰がこの職に就くべきかという観点では、ハセットではないとウォール街の多くの関係者が述べているというのも事実。足元の賭けサイトでは、ハセットのオッズは下がり、ウォーシュが上昇しているというデータもある。市場としてはウオラーにポジティブな印象を持っており、実現すれば市場にポジティブな影響を与えそうだ。いずれにしても、ここ1-2週間で判明する。楽しみに待ちたい。

さらに、米国では、高所得層の消費とAI関連投資が景気を支える一方で、低所得層や非AI分野の投資が低迷する「K字経済」が鮮明となった1年でもある。資産を持ち、前述の株高の恩恵がある高所得層と、社会保障の削減が直撃する中間・低所得層、あるいは、株式市場でもAI関連銘柄が独歩高となる一方で、コスト上昇に苦しむ中小企業銘柄、といったように二極化が鮮明になった1年ともいえる。

これらを踏まえて、2026年の主なスケジュールはこちら。

1月 
・次期FRB議長公表(上旬)
・FOMC(27-28日)
・ミランFRB理事退任(31日)
3月
・FOMC(17-18日)
4月
・FOMC(28-29日)
5月
・パウエルFRB議長任期満了(15日)
6月
・FOMC(16-17日)
7月
・米建国250周年(4日)
・FOMC(28-29日)
9月
・FOMC(15-16日)
10月
・FOMC(27-28日)
11月
・米中間選挙(3日)
12月
・FOMC(8-9日)

また国内では、10月に高市首相が誕生し、積極財政と強い経済を掲げる新政権への期待から、防衛や原子力関連銘柄を中心に株価が急騰する「高市ラリー」が始まった。しかし、総額18.3兆円の「超大型」補正予算成立や、2026年度の予算案が、一般会計総額で122兆3092億円となり、過去最大の規模を更新するなどしていることから、長期金利は先週、一時2.1%と1999年2月以来の水準に達している。

高市政権がやろうとしているのは、積極財政でGDPの成長率を引き上げ、借金を重ね金利が上昇しても成長率が上回っていれば経済としては問題ないというもの。インフレ時にリフレ政策をやるという社会実験ともいえるもので、実際どういう結果を招くのか注目される。

また、日銀は今年は1年間の間に2回利上げを実施、1月に政策金利を0.50%へ引き上げた後、12月にはさらに0.25%上乗せし、政策金利を0.75%とした。これにより2016年のマイナス金利政策導入から続いていた「金利のない世界」からの完全脱却となった。利上げ実施で円買い(円高)を期待していたものの、そのようにならなかった背景は前回のメルマガで触れたとおり。加えて、AI株投資ブームを背景とした日本からの対外証券投資が加速したり、個人投資家による「貯蓄から投資へ」のシフトが加速し、投資に向かった家計資産の多くが海外市場へ流出したりしたことで、資金フローは皮肉にも円売りを加速させる結果になっている。

また、2026年はトランプ関税交渉の際に各国政府と結んだ投資案件による米国への投資が本格化する。日本政府は5,500億ドルの米国への投資を約束しており、この額すべてとは言わないが半分程度は円から米ドルへのフローにつながると思われ、これも円売り圧力になることが想定される。こういったベースとなる資金フローが、2026年もドル円の水準を円安に作用させる可能性がある。

このようにざっと振り返っただけでも、想定内、想定外の様々な出来事があった中で日米市場ともに史上最高値を更新した2025年が終わり、2026年に向けて、日米の金融・財政政策の行方と経済への影響、トランプ政権2年目(中間選挙本格化)、そして台湾問題に端を発する安全保障問題と日中関係の行方など引き続きトピックが目白押しだ。これらが、経済、金融市場にどのような影響を与えるのかの見通しについてはまた改めてお伝えしていく。

今年も残すところ、あと3日。個人的には、例年以上に年末感がない2025年年末。これではただの忙しい月末になってしまうので、ここからは、少しゆく年くる年を意識したこともやっていこうと思っています。皆様はどのようにお過ごしでしょうか?大掃除にご親戚を含めたご挨拶周りなど、お休みとはいえいろいろな用事でお忙しくされる方も多いかと思いますのでくれぐれも体に気を付けて、お過ごしください!

2025年の経済ZAP!!これにて終了、お付き合いいただき有難うございました。
2026年も引き続きよろしくお願いいたします。

よいお年を!!

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