2025/12/27 18:00 | 戦略論 | コメント(0)
パニックになる日本?
今週も色々と国際政治が動いておりますが、地政学・戦略関連のトピックでいえば、やはり注目はトランプ政権によるナイジェリアのISの拠点への空爆でしょうか。
■ 米、ナイジェリアでイスラム過激派空爆 「キリスト教徒迫害」理由に(12/26 ロイター)
この行動の理由は「ISのテロリストがキリスト教徒を迫害しているから」とのこと。現在のベネズエラへの圧力や、6月のイランへの空爆を考えると、第二次トランプ政権は選挙中は「戦争を止める」と喧伝したのとは裏腹に、海外への軍事行動をかなり積極的に行っていると言えます。
これについて興味深いのは、現在のアメリカの右派の中でも、このようなトランプ政権による軍事力の行使にかなり懐疑的な勢力がいることです。彼らは同大統領の岩盤支持層であるMAGA派からも距離を置き始めています。
その典型が極右主義者のインフルエンサーで、米国の若者に絶大な人気を誇るニック・フエンテス。彼はある動画の中で、トランプ政権の海外展開に対する幻滅を次のように語っていました。
「我々は、ブッシュ(息子)の戦争中毒、オバマのエリート優遇、そしてバイデンの認知症という3つの要素に飽き飽きしてたので、そうじゃないはずのトランプに投票したはずなのに、フタを開けたらトランプはその3つ要素のすべての組み合わせだったじゃないか!」
痛烈な皮肉を込めていますが、要するにトランプは宣伝していたこと(海外に軍事力展開をしない)を実行していないということ。トランプ政権の政策の不安定はこうしたところでもハレーションを起こし始めていると言えそうです。
また、前回のメルマガ第56号(下記リンク参照)との関連では、なんといっても12月23日に米国防省(戦争省)が発表した中国の軍事力に関する年次報告書も気になるところです。
・「中国への対抗策」(12/22)
■ 27年末までの台湾有事警戒 米国防総省が中国年次報告書(12/24 時事通信)
こちらの最もキモの部分は「中国は2027年末までに台湾を巡る戦争に勝利できると見込んでいる」という分析。これはいわば中国が台湾統一の成功に自信を深めているということです。
前号(上記リンク参照)でも書いた通り、一方の側(この場合は中国)の「楽観」は戦争を引き起こす決定的な要素の一つです。したがって、いよいよ我々はいかに中国に対してこのような楽観を抱かせないようにするのか(=抑止)を真剣に考えなければならない。そうしたタイミングに直面しつつあるということです。
さて、今回の本題は、ここから一歩話を進めて、日本が中国と危機に陥ることになったら?ということを考えてみたいと思います。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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パニックになる日本?
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▼ロシアによる低強度の戦争
▼パニックになる?
▼イスラエルの専門家からの警鐘
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近況報告
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ということで先日、拙訳『認知戦』の著者であるイタイ・ヨナト氏にインタビューを行ったのですが、とにかく話が
「リアルに認知戦を戦っている人」
のエグいエピソードばかり。ルトワックと同様、毎回、大いに刺激を受けます。
本論でお伝えしたこと以外で印象的だったのは、認知戦においてまた新しい手法が出てきているとの話でした。
2024年に本を作るためにインタビューをした時点では「認知戦」は主にSNS上だけという、いわゆる「ノンキネティック」な手法がほとんどでした。しかし、そのような手法はたった1年で変化してきており、現在はSNSの情報だけでなく、物理的な手段(キネティック)が組み合わされるようになっている、そうしたものが目立ってきているとヨナト氏は述べていました。
具体的にいえば、今回の中国軍機によるレーダー照射事件です。これは実際の航空機による危害だけでなく、それを活用したSNS上のディスインフォメーションとの組み合わせです。
このようなヨナト氏の、新たな動きを積極的に知ろうとする姿勢に接すると、私も、急速に変化しつつある世界(の戦い方)について、常に勉強を怠ってはならないとあらためて身が引き締まりました。
ちなみについ先日ですが、ニュース解説でおなじみの池上彰氏が、11月にヨナト氏が来日したおりにインタビューしていました。
■【動画】なぜインテリジェンスが国を守るのか?元イスラエル諜報員が語るパレスチナ情勢と日本への教訓
参考までに、こちらもぜひご覧ください。
それではみなさま、よいお年を!
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