2026/01/24 19:00 | 戦略論 | コメント(0)
カーニー首相の隠れた警告
今週も色々と国際政治が動いていますが、地政学・戦略関連のトピックでいえば、やはり注目はアメリカのトランプ大統領がグリーンランド獲得の意欲を見せつつ、スイスのリゾート地であるダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に、多くの代表団を引き連れて乗り込んだという話です。
■ トランプ大統領に乗っ取られたダボス 対話通じぬ「怪物の時代」映す(1/23 日本経済新聞)
予想通りというか、トランプ大統領をはじめとするアメリカの政権関係者らは不評の嵐を巻き起こしました。大統領は1時間以上にわたり支離滅裂な内容の演説を行い、ラトニック商務長官は夕食会の席で欧州を批判。夕食会はフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が退席した上、そのまま中止になってしまいました。
しかもトランプ大統領は、カナダを始めとする同盟国を馬鹿にするような発言を繰り返した上、国連に代わる(?)「平和評議会」(Board of Peace)を発足させました。いままでの世界秩序が大きく変わったことを強烈に印象付けるものとなりました。
こうした混沌の中で光ったのは、カーニー首相の演説でした。トランプ政権によってもたらされている世界の転換点を「中堅国の団結」で乗り切ろうと呼びかけたものです。
この演説は短いながらも、格調の高い言葉選びと、来る世界に対処する覚悟が雄弁に語られている点で非常に高い評価を得ています。実際に聞いて、文章を読んでみると、カーニー首相の頭脳の明晰さとメッセージの強さが伝わってきます。
動画はこちらから(英語は01:17〜)。
■【動画】Mark Carney’s full speech at the World Economic Forum in Davos(National Post)
本文はこちら(英語は二段目から)。
■ 「ルールに基づく国際秩序は終わった」カナダ首相がダボス会議で放った“衝撃の現実主義”演説全文(1/21 ディプロマット)
そのメッセージとは、戦後80年間続いてきた「リベラルな国際秩序」は終わり、大国間競争が激化しつつある国際社会の中で、カナダ(や日本)のようなミドルパワー(中堅国)は、「ノスタルジー」を戦略とすべきではなく、冷徹な国際政治の現実を直視し、団結していかなければならないというもの。悲観的ながらも、絶望はしないという強い現実主義を感じさせます。
それにしても、世界の有力な政財界の大物が集まるダボスで、ここまで厳しい警鐘を鳴らす演説、しかもアメリカの最も近い(隣国の)同盟国であるカナダの首相が反米(反トランプ)とも取れるメッセージを送ったということで、西側社会では衝撃が走っています。
一方、高市首相の仕掛けた衆院解散から選挙を迎えることになり、慌ただしい国内状況にある日本では、この演説が示している国際社会の変化と新たな戦略環境がほとんど認識されていない観があります。
そこで今回は、カーニー首相の演説を手掛かりに、日本がこれから直面するであろう国際政治の「現実」とは何か、というテーマについて考えてみたいと思います。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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カーニー首相の隠れた警告
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▼カーニー首相の演説
▼国際政治は弱肉強食か
▼国際政治の「悲劇」
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近況報告
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もうすっかり正月のことを忘れてしまったここ数日ですが、大学院の後期の授業が終わり、先日最終テストが無事行われたところです。
私は前年までは最後にエッセイ(小論文)を提出させていたのですが、今年度からは期末テストで、しかも筆記試験のスタイルに戻しました。AIで書かれたエッセイは、学生たちにとって何の学びにもならないと感じたからです。
そういえば海外でも大学が昔ながらの対面・筆記試験に戻る傾向にあるという記事が出てきました。
■ Colleges Turn to Oral and Handwritten Exams as AI Disrupts Assessments(25/12/15 eWEEK)
教える側としては「それしかないよな」という納得の流れ。AIは便利なのですが、便利すぎて学生たちから「学ぶ」「考える」という機会を完全に奪っていると感じられるからです。
おそらく書く試験のほうが準備も本番も大変だとは思いますが、あの「脳みそに汗をかく」という感覚は、学生の成長している時にしか味わえないアナログなものです。これを体験しているのとしていないのとでは、その後の能力の伸びが違うはず・・・と私は信じています。そのための筆記試験なのです。
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好評発売中の書籍
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