ODYSSEY Geopolitics & Business

【お知らせ】

2025年11月20日、「ODYSSEY(オデッセイ)」にリニューアルいたしました。引き続き読者の皆様のために、様々な情報発信をしていきます。
メルマガは「オデッセイ編集部」のメールアドレスから配信されます。最初は迷惑フォルダに振り分けられることがありますので、メルマガが見当たらないときにはご確認下さい。もしくはMYページから再配信のお手続きをお願いします。

2025/12/22 17:00  | 戦略論 |  コメント(0)

中国への対抗策


先週も色々と国際政治が動いていますが、地政学・戦略関連のトピックでいえば、やはり注目は、日本の政府高官が行ったとされる核武装発言に対する国内外での反応でしょうか。

国外の反応の一つが以下の北朝鮮からのもので、「核武装化は、日本が長い間夢見てきた野望だ」と非難しています。典型的な批判ですが、自分たちの核武装は前提としていることを考えると、その発言には首尾一貫性がありません。

北朝鮮、官邸関係者の核保有発言に反発 「危険な妄動を断固阻止」(12/21 毎日新聞)

もっとも、ここで我々が認識しなければならないのは、北朝鮮や中国がこのような批判をしてくるのは、日本が核武装するかもしれないという「恐怖」を動機としている面もあることです。別に彼らを「かわいそう」などと思う必要はもちろんまったくないのですが、そのような追い込まれた心理から過剰に反応している点は、我々も頭の片隅においておくべきかと思います。

国内の反応では、以下の東京新聞の社説が左派系の大手メディアの典型例といえそうです。

〈社説〉核持つべき発言 軽率のそしりを免れぬ(12/20 東京新聞)

この記事などを読んで思うのは、「個人的な意見」の「オフレコ」発言でさえここまで大騒ぎするのが適切なのか、ということです。核武装の是非の「議論」をすることさえ封じるような動きであり、目の前で核武装を実現している国がある中で、そのような姿勢を対外的に示すことは、抑止(=脅し)の観点からはむしろリスクを高めると感じます。

したがって、安全保障分野において戦略的なメッセージを発しようとしている日本にとっては、決して国益にはならない内容だと私は思います。日本をとりまく安全保障環境がここまで悪化している現状において、あまりにも短絡的で感情的と言わざるを得ません。

このような状況を受けて、今回のメインの話は、いまから二週間ほど前に起こった中国軍機による自衛隊機に対する火器管制レーダー照射事件への対抗策についてです。

中国軍機、2度のレーダー照射 日本政府「危険な行為」と強く抗議 専門家「火器管制用か」(12/9 日テレNEWS)

日本側のこれまでの対応は、「冷静に説明を行っていく」という方針に従っています。あえてことを荒立てず、ひたすら我慢をしてやりすごすアプローチといえるでしょう。

では、ここでの本来あるべき「戦略的な対抗策」と考えられるものはあるのでしょうか?これこそが絶対的な正解だ、といえるアプローチは残念ながらほとんどありません。

しかし、それでも一つの戦略的な考え方に基づけば、いくつかのやり方が考え出されると私は考えています。今回はその一つをご紹介します。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

***********
中国への対抗策
***********

▼土俵を変えろ
▼ベトナムの成功例
▼攻めの選択肢

***********
近況報告
***********

拙訳『大国政治の悲劇』の原著者でシカゴ大学教授であるジョン・ミアシャイマーが来日したので、都内某所で会ってまいりました。

ジョン・ミアシャイマー『新装完全版 大国政治の悲劇』

彼を招いた団体が陰謀論を推し進める組織だったので、あえて会いにいくのはやめようと思っていたのですが、出版社の社長が「翻訳出すのでしたらぜひ会っておきましょう」と勧めてくれたので、思い切って隙間時間を狙って行ってきました。

講演直後の控室で数分程度話をしてきただけですが、対面で会うのは11年ぶり。共通の知り合いもできたことでその話をしつつ、本題としてミアシャイマーの過去の論文を翻訳出版するという話を進めてきました。

ミアシャイマーはウクライナ戦争の以前から毀誉褒貶の激しい理論家ですが、自身の考え方はまったく変えていません。ひたすら自身の「オフェンシブ・リアリズム」という理論を押し出し、呼ばれたら誰のところにでも行って喋ってくるというスタイルを貫いているようです。

プーチンやオルバン、それに中国などにも呼ばれれば頻繁に通っているようです。外野から見れば「もう少し仕事を選べばよいのに」とは思いますが、本人としてはまったく気にしていない様子です。

「相手が誰であろうと図太く同じ話をする」

このような力強いスタイルは、私も見習っていきたいとあらためて感じました。

***********
好評発売中の書籍
***********

『世界最強の地政学』文春新書(★増販決定!★)
『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(★再び増刷決定!★)
『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房(★増刷決定★)
『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(第三刷決定!)
『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)

メルマガ「奥山真司の戦略論から見た世界」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。