2026/08/10 17:00 | 戦略論 | コメント(0)
アジアへのピボットはまだ?
今週も色々と国際政治が動いていますが、やはり中東情勢ですね。トランプ大統領は「イランとの戦争はまもなく終結し、ミサイルの備蓄もまだ大量にある」と主張しました。
■ トランプ氏、イランとの戦闘「近く終結」 米軍「大量の弾薬保有」(8/7 ロイター)
これは主として、「米軍のミサイルが枯渇している」という、最近の米大手メディアなどの報道に対するカウンターの意味があると考えられます。
■ Crucial US missile stockpiles ‘extremely low,’ official says(8/7 abcNEWS)
この報道の元ネタは、アメリカ大手シンク・タンクであるCSISの報告です。イランとの紛争やウクライナ支援の影響により、パトリオットミサイルやTHAADなどの長距離精密誘導兵器の在庫が枯渇し、米軍が軍事的な限界に達しつつあると指摘したものです。
■ Renewed Iran War Would Test Diminished Interceptor Inventories(7/27 CSIS)
このような「弾不足」に加え、米国の工業基盤の弱体化も相まって、トランプ政権はイランとの戦争から離脱するための交渉がますます必要になってきているわけです。しかし、イラン側が依然として強気な姿勢を見せているため、出口戦略は極めて困難な状態です。
その合間に、中東では大きな動きがありました。なんとトルコ、サウジアラビア、パキスタンの3か国が、サウジアラビアのメッカ(イスラム教の聖地)で「共同防衛協定」(メッカ共同防衛協定)に署名したのです。
■ サウジ・トルコ・パキスタンが共同防衛協定署名、中東緊張下で連携強化(8/7 ロイター)
この3か国はいずれもイスラム教スンニ派主導の国家であり、米国と友好関係を持つ国々です。しかし、安全保障分野で連携を強化することが示唆されている背景には、米国の同地域における威信と信頼の低下があると考えられます。
本メルマガの第86号(以下のリンク参照)でも論じましたが、今回の戦争で「米国は同盟国を守れない」ことが判明しました。その衝撃が一つの要因であり、後に歴史的に振り返れば「米国の中東関与の低下のはじまり」を象徴するような動きとなるのかもしれません。
・「アメリカは同盟国を守れない」(7/25)
さらに本稿を執筆中、イラン側はアメリカが到底飲めないような要求を出してきました。戦争被害の補償、地域からの米軍撤退、制裁の全面解除、資産の凍結解除などです。当然アメリカは飲めません。いよいよトランプ大統領はイランから抜け出せなくなってきました。
■ イラン、米に補償要求 海峡開放条件、交渉不透明(8/9 共同通信)
ここで気になるのは、米国が中東から離脱し、我々の住む東アジア方面に軍事的なリソースを振り向けることができるのかという点です。今回は、この問題に関連して英エコノミスト誌に掲載されていた興味深い記事を取り上げます。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
アジアへのピボットはまだ?
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▼シフトしない現実
▼なぜシフトは起きないのか
▼中国のプロービング
▼必要なのは真珠湾?
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本の紹介
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産経新聞に短い書評を書きました。
■ 経験と想像力が左右『歴史を変えた戦略家たち 上・下』フィリップス・ペイソン・オブライエン著、加藤洋子訳(8/2 産経新聞)
すでに本メルマガでも紹介したこともありますが、国家の戦略がいかにリーダーという個人によって形成されてきたのかを、第二次世界大戦の5人の指導者の体験などをベースに考察した研究書です。
最近の戦略の本は「国家」という集団の機能や文化、そして国際的な構造に注目するものが多いので、リーダーという個人の注目はむしろ新鮮です。
というか、過去には個人への注目の方が主流だったんですが、それが著者のオブライエンによって復活したとも言えますよね。
「偏った見方」ということも言えるのですが、戦略に興味のある方は必読です。
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好評発売中の書籍
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■ 『世界最強の地政学』文春新書
■ 『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■ 『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(★再び増刷決定!★)
■ 『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
■ 『戦争論 レクラム版』(解説担当)クラウゼヴィッツ著 芙蓉書房出版
■ 『なぜリーダーはウソをつくのか』ミアシャイマー著、中央公論新社
■ 『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
■ 『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■ 『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■ 『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
■ 『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■ 『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■ 『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■ 『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書
■ 『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書
■ 『「スター・ウォーズ」に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲』カヴァナー編著、文藝春秋社(★最新刊★)
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