ODYSSEY Geopolitics & Business

2026/07/05 18:00  | 戦略論 |  コメント(0)

ハートランド vs リムランド


今週も色々と国際政治が動いていますが、特に注目すべきは、ウクライナがロシアに対してドローンなどによる長距離爆撃を行い、モスクワ近郊の製油所などを破壊しているというニュースでしょうか。

ウクライナ、ロシア深部の製油所と軍需施設攻撃(7/1 ロイター)

ロシア本土からクリミア半島へと続くクリミア大橋のような「チョークポイント」の破壊もあり、ウクライナはロシアの兵站(補給)を妨害し、前線背後に打撃を与えています。こうした攻撃はロシアの経済や国民心理に大きな影響を与え、特にロシア各地で発生している燃料不足やガソリンスタンドの行列は、国民の日常生活に直接的な影を落としていると報じられています。

プーチン大統領は長らくこの件について沈黙していましたが、最近になってこれを「テロ」と表現しました。結果的に、ウクライナが主導権を握りつつあり、プーチン政権に対し、経済的・心理的な圧力をかけているとの見方が広がっています。概してウクライナがかなり有利に戦争を進めているような印象を受けます。

ところがその一方で気になるのが、これが本当に「戦略的」、つまりウクライナの政治目的である「ロシアを交渉テーブルに着かせて停戦交渉へと導く」ことにつながるかです。これはかなり微妙と言わざるをえません。

なぜなら、欧州を中心とする西側諸国がウクライナへの軍事的支援を加速させることで、ロシア側がウクライナではなくNATO側、つまり欧州(!)に対して報復攻撃に踏み切るリスクが高まると考えられるからです。

にわかには信じがたいかもしれませんが、以下の記事が示すように、NATOの高官たちの間では、ロシアがポーランドかバルト諸国に侵攻する可能性が高いという見方が出てきています。全面侵攻とまではいかなくても、かなりの強度の「挑発」を行うとの予想が指摘されています。

Russia preparing possible ‘provocation’ in Baltic states or Poland, sources say(6/26 The Guardian)

いずれにせよ、ウクライナによるロシア領内への攻撃は、ロシアの経済に一定のダメージを与えているものの、爆撃だけでプーチン政権を政治的に屈服させることはできません。したがって今後は、事態のエスカレーションをどのようにコントロールしていくのかが焦点となります。

さて今週は、拙訳『デンジャー・ゾーン』の著者たちであるマイケル・ベックリーとハル・ブランズの論考を取り上げます。二人の現代の戦略家が発表した、最新の「地政学」に寄せた戦略の議論です。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

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ハートランド vs リムランド
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▼ハートランドの挑戦
▼リムランドの課題
▼論文の弱点
▼地政学の難しさ

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近況報告
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サッカー日本代表がブラジル戦で敗北してしまいました。

私は今回のワールドカップは忙しすぎてほとんど見られていないのですが、それでもSNSなどを見ていると、様々な分析が語られていて興味深かったです。

特に戦略論をやる人間として気になったのは、ブラジル戦の「敗因」を、私が提唱する「戦略の階層」という概念(技術<戦術<作戦<軍事戦略<大戦略<政策<世界観)で見ると、大きくわけて三つの要因で語られていたことです。

第一は、試合当日における「戦術レベル」の指摘をするパターン。これは日本代表が後半にブラジル側の戦術の変化に対応できず、防戦一方になって最後に押し込まれたとするものです。

ここから導かれる教訓は「日本側も守りに入らずに攻撃的な戦術を使うべきだった」です。つまり戦術の修正ですね。

第二は、少数派ですが、「森保監督の力量不足」というもの。これはもちろんブラジル代表の監督であるアンチェロッティの修正力と比較して、ということです。

相手は欧州の有力リーグで有名クラブを率いてことごとく優勝に導いている人物です。それに比べると、後半の戦術の選択と、それに対応する修正案を指示できなかった森保監督のミスが目立ったという評価です。

ここから導かれる教訓は「代表監督を替えろ」です。現場のリーダーの質や判断の話になってくるので、これは作戦〜軍事戦略のレベルに当てはまります。

第三は、やはり「選手の質の足りなさ」でしょうか。メディアなどでは「個の力」という言葉で表現されていますが、たしかにブラジル代表の選手の層の厚さと比べると、日本代表はまだまだです。

ここから導かれる教訓は「選手層を厚くしろ」です。日本サッカー協会やJリーグが選手の育成に力をそそぎ、国内リーグを充実させ、欧州のトップリーグでさらに活躍できる選手を輩出する必要があります。

これは一つの試合でのスキルの話ではなく、それ以前の兵站というか、国家のリソースの話になってくるので大戦略レベルの議論になります。

このように「戦略の階層」という考え方は、サッカーのワールドカップのようなスポーツのイベントを見る時にも使えるわけです。

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好評発売中の書籍
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『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
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『なぜリーダーはウソをつくのか』ミアシャイマー著、中央公論新社
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『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
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『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書
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