2026/07/12 08:00 | 戦略論 | コメント(0)
通り道が変わると世界が変わる
今週も国際政治が大きく動いていますが、注目すべきはやはりイラン情勢ですね。
予想通りというべきか、アメリカとイランは再び互いに軍事的な攻撃を始めており、トランプ大統領に至っては「覚書はもう終わり」などと発言しています。攻撃の応酬は一旦は終息したものの、依然として不安定な状況が続いています。
現時点でわかっていることは、最初にイランがホルムズ海峡を通過する船を攻撃しましたが、それに対してアメリカが約60か所のイランの軍事施設を攻撃、その報復としてイランがクウェートとバーレーンの米軍関連施設を攻撃した、ということです。
■ 【分析】イラン和平協議で「終わった」発言、トランプ氏が興じる経済の火遊び(7/9 CNN)
上記記事にあるように、ホルムズ海峡は一応は開放状態にあるようです。ただし、いつ封鎖されるかわからない状況は変わっていません。
原油価格が落ち着いたとはいえ、相変わらず米国の原油の備蓄は低水準です。危機発生後に米国から原油を大量に調達している日本にとっては(といってもその備蓄から融通してもらっているわけではないものの)他人事とは言えない状態です。
今後のシナリオとして最も参考になると考えられるのは、1979年に始まったイラン米国大使館人質事件です。この事件の一部はハリウッド映画にもなっており、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
■ 映画『アルゴ』(2012年)
人質事件はイラン革命直後に起こりました。親米のパフレヴィー王政が革命によって倒れた後、アメリカが元国王の入国(亡命)を病気治療を理由に認めたことに対し、革命派の学生らが猛反発したことがきっかけでした。
11月4日、学生たちがアメリカ大使館を襲撃し、外交官や職員ら52名を人質に取りました。拘束は444日間の長期に及び、米軍は救出作戦を試みるも失敗。当時のカーター政権に致命的な打撃を与えました。
最終的に1981年1月20日、レーガン大統領の就任当日に人質全員が解放されました。この事件を契機にアメリカとイランは国交を断絶、現在まで続く深い対立関係が決定づけられました。
この歴史を一つのシナリオ(アナロジー)として用いると、今回のイラン事案も、今後の展開が見えてきます。
トランプ政権にとって「地上侵攻」というオプションが存在しないのであれば、この問題を解決する糸口は見出せないでしょう。イランは相変わらずホルムズ海峡を世界経済の人質に取りつつ、自国の生存に不可欠となる核開発を着々と進める。そうした構図が続くことになります。
そして今回のようなシグナル的な攻撃があってから一時停戦、そして緊張というサイクルを繰り返す、不安定な膠着状態に陥ります。この状況はトランプ政権が続く限り変わらないでしょう。
前述の人質事件において、カーター大統領(民主党)は問題を解決できず、次のレーガン大統領(共和党)まで持ち越されました。おそらくトランプ大統領も似たような状況に追い込まれるということです。
当時は民主党→共和党という政権交代のタイミングでしたが、今回は共和党→民主党への移行となるかが注目です。いずれにせよ、この問題は当分は解消することはなさそうな状況となってきました。
さて、今回は、いつもと少し視点を変え、東南アジアに目を移します。ミャンマーで続く内戦と、そこから見えてくる「地政学」的な論点を取り上げます。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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通り道が変わると世界が変わる
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▼ミャンマーの内戦
▼中国の介入
▼地政学から考える
▼大国にとっての通り道
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近況報告
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私が部外講師をやっている自衛隊の幹部学校で雑談中に聞いた話を一つ。
近年の自衛隊は、たとえば「バリカタン」のような、海外の国々とのマルチな軍事演習を続々とこなしています。みなさんも耳にしたことがあるかもしれません。
■ 7か国の防衛軍が参加する大規模なバリカタン演習(5/3 FORUM)
これらの成果は実に華々しいものですし、日本から見ているわれわれも「よくやっているなぁ」と感じることでしょう。実際のところ、外交・安全保障の観点から有益であると考えられます。
ところが一部の幹部の人々にはそれとは異なる面が頭に浮かびます。それは、部隊の海外出張が増えることは、肝心の国内における自らによる訓練がおろそかになる恐れがあるということです。
さらに、海外の訓練に参加すると、どうしても上からの指示に従うだけの行動が増えてしまいます。小隊・中隊レベルの指揮官たちの「自分たちの頭で考えて決断して指揮する」というチャンスを奪うことになるかもしれないというのです。
また、部隊ごとの訓練をしておかないと、以前まで当たり前のようにやれていた作戦行動ができなくなるということもあります。訓練していないと、それまで部隊で培っていたスキルが簡単に失われてしまうというのです。
実は私が英国に留学していた2000年代の後半にも、似たような話を聞きました。英軍の幹部が「英陸軍は対テロ戦で忙しく、おかげで部隊が通常の機動・作戦行動ができなくなってしまっている」と嘆いていたんですね。
華々しい海外出張での多国間合同訓練もいいですが、それは本来の任務をこなせる足腰があってのこと。部隊の隊員の限られた時間をどのように効果的に配分するのかも、地味ですが極めて重要な防衛省のマネージメントに関わるテーマであると、あらためて感じました。
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