ODYSSEY Geopolitics & Business

2026/10/20 09:00  | 戦略論 |  コメント(0)

「軍事的勝利」を目指してはいけない?


今週も色々と国際政治が動いていますが、日本に関わるところで気になるのは、企業の個人情報漏えいの問題。ここ数週間で次々と露呈しています。

■ 個人情報“漏えいラッシュ”止まらず ヤマト運輸や日経新聞など大企業で相次ぐ…専門家は「二次被害」懸念 流出情報数千万件が闇サイトで売買か【news23】(10/17 TBS NEWS DIG)

実は私自身もこの被害に遭いました。更新したばかりの免許証を、偽サイトで認証目的で送付してしまうという失態を犯してしまったのです。

さっそく日本信用情報機構(JICC)などに「免許証が漏れた」という情報を登録しましたが、その情報さえも漏れそうな気がしました。結局のところ個人でできる対策には限界があると痛感しています。

この辺りのことを、インターネットに詳しい近所のAI企業の社長さんと議論してみたのですが、彼によれば、「もはや対策を打ってどうにかできるような事態ではなく、ネットインフラそのものが汚染・毀損されているような状態だ」とのこと。もしこの前提が正しいとすると、すでにネット上で機微な個人情報を扱うこと自体が大きなリスクです。

アカデミックな議論に無理やりつなげるなら、ウルリッヒ・ベックという学者が提唱していた「リスク社会」という概念が80年代末から90年代にかけて盛んに論じられていました。30年の時を経て、この概念が情報通信環境そのものにおいて実現しつつあると言えますね。

さらに戦略論におけるサイバーの文脈では、ハッカー側がAIを使い、低コストかつ自律・自動的・継続的に攻撃を仕掛けることが可能になり、まさに「攻撃優位」の時代がやってきたと言えます。このまま対策が追いつかなければ、いずれは映画「ダイハード4」で描かれたような、ハッカー主導の犯罪集団が国家を転覆させる事態も現実になるかもしれません。

日本では梁議員のスキャンダルでメディアは大忙しです。しかしその影で、我々の使う情報通信インフラそのものが毀損されつつあります。この現実に目を向けないと、ある日とんでもない事態に直面するかもしれない――とヒヤヒヤしている今日この頃です。

さて今回は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された、スティーブン・ビドルという戦略論の世界では非常に有名な学者が、弟子2人と書いた論文を紹介します。その議論を踏まえて日本への示唆などを考えてみたいと思います。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

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「軍事的勝利」を目指してはいけない?
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▼軍事的勝利は神話である
▼戦争を終わらせるためには
▼日本にとっての教訓

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本の紹介
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久々に本の紹介です。タイトルの通り、中身もかなりショッキングなものです。

■ 太田 肇 著『なぜ「賢い人」が集まってしょうもない意思決定がなされるのか』

あらゆる「組織」で働いた経験がある人なら、この中で紹介されているエピソードと似たような体験をいくらでも思い出すでしょう。本書は日本型組織では「しょうもない」決定がなされる理由を考察していくものです。

ただし本書は他の経営組織論と異なるのは、このような「くだらない決定」が、実は共同体型組織の中で働く個人の「合理性」の追求から生じているという構造を明らかにしている点です。そのメカニズムを豊富なエピソードとともに読み解いています。

読むと暗くなったり、もしくは「あるある!」と頷くことになるかもしれません。それは人によるでしょうが、これから国内でずっと働いていく覚悟のある人なら読んでおいて損のない本です。

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好評発売中の書籍
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■ 『戦略論入門』中公新書ラクレ(★最新刊★)
■ 『世界最強の地政学』文春新書
■ 『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■ 『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版
■ 『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
■ 『戦争論 レクラム版』(解説担当)クラウゼヴィッツ著 芙蓉書房出版
■ 『なぜリーダーはウソをつくのか』ミアシャイマー著、中央公論新社
■ 『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
■ 『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■ 『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■ 『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
■ 『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■ 『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■ 『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■ 『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書
■ 『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書
■ 『「スター・ウォーズ」に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲』カヴァナー編著、文藝春秋社

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