2026/08/30 08:00 | 戦略論 | コメント(0)
弱者が勝つ条件とは
今週も色々と国際政治が動いています。ネパールの大洪水もありますが、やはり気になるのはロシアに関する動き。きっかけとなったのは、アメリカのラトクリフCIA長官がロシアの首都モスクワに非公式の「弾丸ツアー」を行ったことです。
■ CIA長官のモスクワ訪問、NATO攻撃を控えるよう警告する目的 イラン支援停止も促す(8/28 CNN)
ラトクリフ長官はロシア側に対し、NATO(北大西洋条約機構)領域への攻撃を行わないよう直接警告したとのこと。イランについてはアメリカが経済的圧力を強めているところですが、同国への軍事・経済支援を取りやめるよう促す狙いがあったとも言われています。
興味深いのは、2021年11月にロシアのウクライナ侵攻の阻止のために訪ロしたウィリアム・バーンズ長官(当時)との比較。このときを想起すれば、米欧の当局者たちが「プーチン大統領が近隣国へ限定侵攻を試みて、NATOの結束を揺さぶるのではないか」との懸念を高めていることを示しているといえるからです。
ウクライナ正面でも十分に厳しい膠着状態にあるロシアが、まさか戦線を拡大してNATOにまでケンカを売ってくるわけがないとも考えられます。しかし80年ほど前にも似たようなことをやった国が東アジアにありますので(中国大陸で膠着からの真珠湾攻撃)、安心はできません。
実際のところ、バルト三国周辺でのロシア側の怪しい動きは小さいながらも、 西側のメディアで連日報道されています。個人的に衝撃的だったのは、今月初め、ドイツのライプツィヒ・ハレ空港で、爆発物が搭載されたドローンがウクライナの貨物機の翼に接触した事件です。
■ Europe eyes Russia in attacks on weapons and cargo. But Germany treads lightly.(8/26 The Washington Post)
幸い不発に終わりましたが、もし爆発していたら大惨事になり得た事件でした。これを受け、ドイツの国会議員や安全保障の専門家からは「(ロシアによる)明確な軍事攻撃の計画があった」と危機感が示されましたが、メルツ首相や国防・内務当局は誰の犯行かを特定せず、ロシアの関与を示唆することも避けており、その慎重すぎる姿勢にドイツ国内では批判が高まっているようです。
バルト三国やポーランドなどはロシアの関与を強く疑い、実際にイタリア、ブルガリア、エストニア、スロバキアなどの軍事施設や兵器工場でも不審な爆発や放火が複数報じられています。欧州の当局者は、ロシアが「代理人」や犯罪者を利用した「ハイブリッド戦」を展開し、NATO側の「レッドライン」を探ると同時に、ウクライナ支援の阻止や市民の不安煽動を狙っていると分析しています。
このような情勢を受けて、アメリカのCIAのような情報機関は「ロシアが今後数年以内に西側同盟国へ限定攻撃を仕掛ける可能性がある」と分析したのでしょう。今回の極秘訪問は西側全体の警戒感の表れだと言えます。
そこで気になるのは、我が日本のあるインド太平洋方面の安全保障環境です。中東と欧州の案件により、米軍のプレゼンスが手薄になっています。
■ 米空母不在の西太平洋 中東対応で揺らぐ「太平洋重視」(8/18 Yahoo!ニュース)
日本の安全保障状況がかなり深刻であることは明白になりつつあります。この現実はもっと知られるべきと思います。
さて、そのような中で考えなければいけないのは、先週から引き続いての「日本のとるべき弱者の戦略」です。今回はさらに新しい研究を踏まえて考えてみます。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
弱者が勝つ条件とは
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▼弱者は強いのか?
▼勝敗を決めるのは?
▼パワーへの信仰
▼日本がとるべき戦略
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本の紹介
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ハル・ブランズは、拙訳『デンジャー・ゾーン』の著者の一人であり、その後も実に多くのコラムと著作を発表し続けている戦略系の学者です。
■ マイケル・ベックリー、ハル・ブランズ『デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突』
近年、専門の大戦略の関係もあり、古典地政学にだいぶ注目していることが分かったのですが、本メルマガ第83号(以下のリンク参照)でも、地政学を活用した議論を紹介しました。
・「ハートランド vs リムランド」(7/5)
そのブランズが、なんとまた新刊を出していました。タイトルは『AIの地政学』(Geopolitics of AI)。まさか単著!?と思ったのですが、彼が編者を務めた論文集でした。
さっそく手に入れて読んでみました。論文の著者には若手からベテランまでいて、主な議論のポイントは「AIが米中の覇権争いにどのような役割を果たしてくるのか」。
さすがにブランズは「戦略家」ですので、AIという技術を「新しい万能兵器」ではなく、むしろ大国の経済力・軍事力・同盟関係・国家統治をまとめて変化させ、次の世界秩序を決める基盤技術として捉えています。同時に、その先端性から「不確実性」をもたらすと指摘します。
そのため、アメリカに必要なのは、「AIの安全性」だけを考えることでも「中国との技術競争」だけを見ることでもなく「AIを中心にした包括的な大戦略」を構築することだというメッセージにまとめています。安保関係者がAIの影響をまとめた先駆けの論文集として、今後も注目を集めそうな良書と思います。
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好評発売中の書籍
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■ 『世界最強の地政学』文春新書
■ 『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■ 『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版
■ 『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
■ 『戦争論 レクラム版』(解説担当)クラウゼヴィッツ著 芙蓉書房出版
■ 『なぜリーダーはウソをつくのか』ミアシャイマー著、中央公論新社
■ 『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房
■ 『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■ 『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■ 『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
■ 『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■ 『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■ 『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■ 『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書
■ 『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書
■ 『「スター・ウォーズ」に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲』カヴァナー編著、文藝春秋社(★最新刊★)
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