ODYSSEY Geopolitics & Business

2025/12/15 17:00  | 戦略論 |  コメント(0)

戦争の原因~中国の場合


先週も色々と国際政治が動いていましたが、地政学・戦略関連のトピックでいえば、やはり注目は、トランプ政権が現地時間12月5日に発表した2025年度版の「国家安全保障戦略」(NSS)ですね。

米安保戦略「トランプ版モンロー主義」 国益優先、西半球対応に重点(12/5 日本経済新聞)

日本ではこの記事にもあるように、「トランプ版モンロー主義」とでも言える西半球(南北アメリカ)重視の姿勢が打ち出されていながら、アジアにからむところでは意外なほど中国には厳しい態勢をとっていることから、「とりあえず一安心」という意見も多いようです。これは拙訳『アジア・ファースト』の著者で現国防省ナンバー3のエルブリッジ・コルビーの意見が強く出たのだろうと言われております。

ところが、欧米メディアでの報道では受け取られ方がかなり違っています。とりわけこれはトランプ政権が「親ロシア宣言」を表明したシンボリックな文書であるとして、異様に警戒されています。

その異常性は、以下の記事にあるように、おりしもロシア政府が歓迎している様子であることからも見てとれますね。

ロシア政府、アメリカの「安全保障戦略」を前向き評価 自分たちの見方に沿うものだと(12/8 BBC)

これはつまり、トランプ政権が戦後の80年間にわたってアメリカが進めてきた「リベラルな価値観」を捨てて、まさに「力による勢力圏の棲み分け」のような、リアリズム剥き出しの世界を目指しているように見えるということです。

実はこのような「トランプ大統領が欧州を見捨ててロシアを利する」という世界観は、私が解説を書いた『もしロシアがウクライナに勝ったら』という本の中でも、設定は微妙に違えども、シナリオとしては提示されていました。しかも日々のニュースを見ていても、実際にそれに近い状況になってきているのがツライところです。

カルロ・マサラ『もしロシアがウクライナに勝ったら』

その中で気になるのは、米中の関係が安定している中で、トランプ大統領自身があまり日本側に肩入れするような気を見せていないことです。以下の記事でもわかるように、国務省のような実務担当の報道官などは中国を公式に批判するような声明を出しつつも、トップレベルからは中国を直接批判するような言説が聞こえてきません。

日米同盟維持し中国と協力 トランプ氏、対立から距離(12/12 共同通信)

これを踏まえて私が気になっているのは、以下のアトランティック誌の記事です。トランプ大統領が周りをイエスマンに囲まれていて共和党の執行部にも心配されていることを指摘したものです。

The Bubble-Wrapped President(12/1 The Atlantic)

この記事によれば、最近のトランプ大統領は国内出張が激減し、移動先は自らのゴルフクラブや富裕層との会合が中心で、本格的な集会をほぼ行っていないとのこと。その結果として支持者の関心や不満をリアルタイムで把握できなくなっていると指摘しています。

本メルマガでも第53号(以下のリンク参照)で触れましたが、トランプ大統領は前任者のジョー・バイデン並みの高齢による体力の衰えを指摘されています。上の記事をあわせて考えてみると、来年の中間選挙の与党共和党の惨敗の予測もある中で、いよいよ政権運営が不安定化することが危惧されます。

「抑止の本質」(11/30)

そのような状況の中で、やはり気になるのは、高市発言から始まった中国軍機による自衛隊機への火器管制レーダー照射案件の行方です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、実は空母「遼寧」を中心とする中国海軍は、日本の南側の海上で長期の軍事演習を行う予定だと報じられています。

中国空母に補給艦合流 長期行動視野か、発着艦続く―防衛省(12/9 時事通信)

そこで今回は、この一触即発ともいえる状態の中で、もし戦争が起こるのであればそれはどのようなものになるのかについて考察を述べます。本メルマガ第48号(以下のリンク参照)に続き、二度目となる「戦争の原因」についての知見から考えてみたいと思います。

「戦争の原因?」(10/25)

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

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戦争の原因~中国の場合
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▼戦争の原因
▼原因は一つではない?
▼「楽観」が戦争を起こす?

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書評『私たちの戦争社会学入門』
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『やさしくわかるエネルギー地政学』小野﨑 正樹、技術評論社
『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房(増刷決定!)
『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版、
『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
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