ODYSSEY Geopolitics & Business

2026/04/25 20:30  | 戦略論 |  コメント(0)

戦術と戦略は違う


今週も色々と国際政治が動いていますが、日本にとって最も重要なのは、やはりイラン情勢ですね。

毎日ニュースを見ている方であればご存知のとおり、ホルムズ海峡はいまだ開いていません。二回目となる停戦交渉も試みられたようですが、結果をみればイラン側は仲介国のパキスタンに来ることなく、米側の特使を任されたバンス副大統領も飛行機に乗ることはありませんでした。

アメリカ バンス副大統領のパキスタン行きは中止 ホワイトハウス当局者(TBS NEWS DIG 4/22)

停戦状態が続いていることはわずかな希望といえます。しかしその一方、アメリカは「次の一手」として、イランへの攻撃を再開することも当然のように視野に入れているとも報じられています。

米軍、ホルムズ海峡を集中的に狙う計画を策定中 イランとの停戦崩壊に備え(4/24 CNN)

この報道によれば、新たなイラン攻撃計画の存在が明るみになりました。今度は「戦略的水路の周辺へのより集中的な爆撃」が狙われているとされ、事態がますますエスカレートしているように見えます。

そのような中で私が特に気になっているのは、ここ数ヶ月で三回目のスクープとなる、ウォールストリート・ジャーナル紙の以下の報道です。

Behind Trump’s Public Bravado on the War, He Grapples With His Own Fears(4/18 WSJ)

この記事では、米軍の顧問たちが、イランで撃墜された米空軍兵士を救出するという、リスクの高い作戦の指揮がとられていた部屋から、トランプ大統領が意図的に排除されていた、という衝撃的なエピソードが紹介されています。予測不能な行動が作戦を危険にさらすことが懸念されたことが理由とのこと。

イランが4月の初めに米軍のF-15戦闘攻撃機を撃墜したことは記憶に新しいところですが、この知らせを受けた後、大統領は精神的に極めて不安定な状態になり、ホワイトハウスの執務室でスタッフたちを何時間にもわたって怒鳴りつけ、1979年のイラン大使館人質救出作戦に失敗して再選のチャンスを失ったジミー・カーターと同じ状況になってしまうことを心配していたといいます。

そこで関係者は、大統領の救出作戦へのアクセスを制限する決定を下し、リアルタイムの指揮権を与える代わりに、「重要な瞬間」にのみブリーフィングを行ったようです。

結果的に作戦は成功したわけですが、その知らせを受けたわずか数時間後にトランプ大統領は目を覚まし、自身のSNSで下品な言葉を交えた脅迫を投稿しつつ、イランに「地獄のような生活」を強いると警告したことが記されています。

すでにみなさんもお気づきかもしれませんが、トランプ大統領はイランで不必要な戦争(これこそまさに「いらん戦争」!)を始めてしまった挙句、それが上手く行かないため、かなり焦っている様子だということです。

これが中小国の大統領であれば国際的にも大した影響は出ませんが、世界ナンバーワンの国の大統領が部下に決定権を制限されているような状態なのは・・・・実に困ったことです。

さて、そのような状況を踏まえつつ、我々が忘れてはならないのは、やはり東アジアにおける米中対立の行方です。今回は最新の興味深い論文を参照しつつ、戦略論からこのテーマをどのように考えることができるかについて、考察をお伝えしたいと思います。

※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。

***********
戦術と戦略は違う
***********

▼「トゥキュディデスのワナ」の真実?
▼抑止を破るもの
▼戦略と戦術を分ける

***********
近況報告
***********

先日、あるところで陸上自衛隊の幹部と飲む機会がありました。彼らは「レンジャー」という、3ヶ月間にわたる強烈な訓練の課程を経て習得する陸自独特の資格(8%しかいない)を持っていたのですが、その肉体の限界まで追い込む経験は壮絶で、戦慄をおぼえたほどでした。

ただ、彼らの話の中で最も印象的だったのは、極限状態になって会得した心の持ち方でした。あと何時間・あとこの仕事をしたら終わる、と思うと精神的に持たないので、逆に「この訓練は永遠に続くのだ」という諦めの境地に入ることで、なんとかやり過ごせたというのです。

私も含めて、一般の日本人はここまで自分を極限状態に追い込むことはないでしょう。それでも困難になった時の心の持ち方として、一つの大きな参考にはなったような気がしました。

***********
好評発売中の書籍
***********

『世界最強の地政学』文春新書(★増販決定!★)
『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(★再び増刷決定!★)
『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
『戦争論 レクラム版』(解説担当)クラウゼヴィッツ著 芙蓉書房出版
『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房(★増刷決定★)
『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(★第四刷決定!★)
『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)
『『スター・ウォーズ』に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲』カヴァナー編著、文春(5月14日発売★最新刊★)

メルマガ「奥山真司の戦略論から見た世界」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。