2026/04/11 15:00 | 戦略論 | コメント(0)
トランプは勝ったのか
今週も国際政治は様々に動いていますが、日本にとって最も重要性が高いのは、やはりイラン情勢でしょう。
その中でも特に注目すべきは、またしてもニューヨーク・タイムズ紙が報じたスクープ記事です。今回は、ホワイトハウス担当の優秀な二人の記者が、トランプ大統領がいかにして戦争に突入したのかを詳細に書いています。
■ How Trump Took the U.S. to War With Iran(4/7 The New York Times)
この記事によれば、今回の「壮絶な怒り」作戦の開始の発端となったのは、2026年2月11日にホワイトハウスで行われた、イスラエルのネタニヤフ首相による極秘説明だったとのことです。
ネタニヤフ首相は、イランの最高指導者の排除、軍事力の破壊、国内の民衆蜂起、そして体制転換(レジーム・チェンジ)まで視野に入れた4つの構想を提示し、トランプ大統領はその大胆なプランに強く惹きつけられたといいます。そしてネタニヤフは「イランの脅威を放置するコストは、攻撃に伴うリスクより大きい」と強く主張したようです。
ところが翌日の米側の分析では、イラン指導部の排除や軍事能力の大幅な破壊は可能であっても、民衆蜂起や親欧米政権の樹立といった「体制転換」シナリオは「非現実的だ」と判断されたとのこと。では攻撃はどうするのか。
政権内部でも意見は割れており、たとえばヘグセス国防長官は開戦に前向きだったのに対して、ヴァンス副大統領は最も強い慎重論を唱えたといいます。ヴァンスは、戦争が中東の混乱を拡大させ、米軍の弾薬備蓄を減耗させ、ホルムズ海峡封鎖によって石油価格高騰を招き、さらに「新たな戦争をしない」と期待した支持層(MAGA派)を裏切ることになると警告しました。ケイン統合参謀本部議長は、弾薬不足や海峡封鎖の危険性を示したものの、最終的な是非判断は大統領の判断に委ねました。
それでもトランプは、ネタニヤフの主張と自らの直感を重ね合わせ、短期かつ決定的な勝利が可能だと考えたようです。体制転換そのものには懐疑が残ったものの、イランの核保有阻止とミサイル能力の破壊は達成可能な目標と整理され、最終会議でトランプは「やる必要がある」と決断したとのことです。
本記事は、実に臨場感のある素晴らしい筆致で書かれており、まるで目の前で政権内部のやり取りが行われているような感覚で読むことができます。しかし、開戦に至るまでの経緯をこうして詳細に見ても、結論としては、トランプ大統領が最終的に自分の直感に頼る形で決めた、と言えそうですね。
さて、その後、アメリカとイランの間で停戦合意が成立し(これも不確かな部分がありますが)、直接交渉が始められることになりました。そこで今回は、この停戦をめぐる動きについて、アメリカが勝ったといえるのか、あるいはもっと別の観点から見るべきなのか、考察を述べたいと思います。
※ここからはメルマガでの解説になります。目次は以下の通りです。
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トランプは勝ったのか
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▼アメリカは勝ったのか?
▼イランが勝った?
▼世界を変える戦争
▼日本への波及
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近況報告
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すでに何度かお知らせしてきましたが、昨年いっぱい取り組んでいた、映画「スターウォーズ」を題材にして「戦略」を学ぶ本の日本語版がとうとう完成し、5月14日に発売されることになりました。
■ 『カヴァナー編著『スター・ウォーズ』に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲戦略』
この手の「スターウォーズ解説本」というのは枚挙にいとまがないわけですが、この本がそのような類書と決定的に違うのは、実際の戦争を経験した英語圏の軍人や専門家たちが、「戦略」という概念をキーワードとして、スターウォーズの戦争を縦横無尽に分析している点です。
編著者の一人はなんと私のイギリスの大学院の後輩にあたる人物なのですが、現役の米陸軍の軍人だったときに、「戦略」を学生たちに学ばせるための教本をつくろうと思ったことがきっかけだとか。
読んでみると、たしかに面白い。
たとえば、ジェダイから考える「政軍関係」や、帝国軍の「兵器調達」のまずさ、帝国艦隊の編成の間違い、そして帝国軍の兵士であるクローンのストームトルーパーたちの兵役後の社会保障についての疑問など、その視点が妙にリアルで納得するものばかり。
個人的に最も興味深かったのは「知恵者」として描かれる緑の宇宙人「ヨーダ」が、実は指導者や指揮官としては無能であったという指摘や、シンプルな兵器の方が強いこと、さらにはジェダイの精神修養のようなことは世界中の軍隊でも行われていることなどです。戦争を通じた文化や制度などを考える上でも参考になる論文ばかりです。
ということで、本メルマガの「戦略論から世界を見る」という主旨にも合致する面白い本です。予約も開始しました。ぜひよろしくお願いします。
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好評発売中の書籍
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■『世界最強の地政学』文春新書(★増販決定!★)
■『新しい戦争の時代の戦略的思考』飛鳥新社
■『サクッとわかる ビジネス教養 新地政学』新星出版社、改訂版(★再び増刷決定!★)
■『やさしくわかるエネルギー地政学』小野崎 正樹、技術評論社
■『戦争論 レクラム版』(解説担当)クラウゼヴィッツ著 芙蓉書房出版
■『クラウゼヴィッツ: 『戦争論』の思想』マイケル・ハワード著、勁草書房(★増刷決定★)
■『地政学:地理と戦略』コリン・グレイ&ジェフリー・スローン編著、五月書房新社
■『戦争の未来』ローレンス・フリードマン著、中央公論新社
■『インド太平洋戦略の地政学』ローリー・メドカーフ著、芙蓉書房出版
■『戦争はなくせるか』クリストファー・コーカー著、勁草書房
■『デンジャー・ゾーン』マイケル・ベックリー&ハル・ブランズ著、飛鳥新社
■『スパイと嘘』アレックス・ジョスキ著、飛鳥新社
■『アジア・ファースト』エルブリッジ・コルビー著、文春新書(★第四刷決定!★)
■『認知戦:悪意のSNS戦略』イタイ・ヨナト著、文春新書(★最新刊★)
■ 『『スター・ウォーズ』に学ぶ現代の戦争 戦略の逆襲戦略』カヴァナー編著、文春(5月14日発売★最新刊★)
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